コンサル業界について

コンサルティング業界の展望について、日本のコンサルティングファームの市場規模や
コンサルティングファームの属性・動向の視点を通してご説明いたします。

コンサルティング業界

の成り立ち

コンサルティング業界はその多くが19世紀後半から20世紀初頭に現れた比較的新しい業界です。コンサルタントという職業が生まれたのは19世紀後半のアメリカです。その時代はいわゆる大企業が次々と誕生してきていました。そのため、組織を効率的に運営する理論が求められ、1881年にはペンシルバニア大学でアメリカ初の経営学部が登場、さらにハーバード大学やシカゴ大学にも経営学部が作られました。大学でMBA育成システムが確立するに従い、個人でコンサルティング業務を行う人たちが増えていき、やがてコンサルタント同士が共同事務所を設立し始めコンサルティングファームが形成されていきました。

 

初期のコンサルティングファームの取り扱う領域は会計や事務などの「効率化」が主流でしたが、20世紀に入ると経営の意思決定を支援する経営戦略構築を主眼とするコンサルティングファームが現れ始め、多くの経営手法が開発されていきました。日本においては1966年にボストンコンサルティンググループが、次いで1971年にマッキンゼー&カンパニーが進出し、コンサルティングファームの存在が徐々に知られるようになります。外資系コンサルティングファームが日本市場に次々と進出するにつれ、国内系コンサルティングファームも誕生していきました。

コンピューターシステムの性能が飛躍的に伸びていく中で経営や業務におけるITの活用は大きなテーマとなり、ITコンサルティングやERPの導入支援などのサービスが大きく成長していくことになります。更に、最近はDX(デジタルトランスフォーメーション)や先進技術(AI、IoT、RPA、Blockchainなど)や特定業界(ヘルスケアなど)、特定領域(マーケティング、コンプライアンス、環境など)に専門特化したコンサルティングファームも見られるようになり、コンサルティングサービスの多様化はこれからも進んでいくと予想されます。

日本のコンサルティングの市場規模

コンサルティング業界の規模

IDC Japan株式会社によると、ビジネスおよびITコンサルティングで構成される「国内コンサルティングサービス市場」の予測として、2018年の同市場規模は前年比6.4%増の7,659億円になったとしています。その内、ビジネスコンサルティング市場の2018年の支出額は、前年比7.8%増の4,227億円となり、初めて4,000億円を突破しています。

 

今後の市場全体の成長性については、2018年~2023年のCAGRは5.4%、2023年には9,969億円(約1兆円規模)まで成長すると予測されています。

 

今後注目される市場は「デジタル関連コンサルティング」市場です。これはDX支援に関わるビジネスコンサルティング領域およびITコンサルティング領域の双方を含むデジタルテクノロジーの活用に関わるコンサルティング市場として認識されています。具体的には、クラウド、アナリティクス、モビリティ、ソーシャルといった第3のプラットフォームの導入/活用、あるいは、同プラットフォームを通じて提供されるIoTやコグニティブ/AIシステム、サイバーセキュリティなどの導入/活用に関わるコンサルティング案件が含まれています。

新たな事業モデルや生産性向上のためのデジタル技術の活用が不可欠となっており、サー主要ファームが人材強化に積極的であり、デジタル案件への対応力も徐々に強化されていることから今後のコンサルティング市場の牽引役となることは間違いありません。

この市場の支出額は2018年に前年比40.5%の成長を遂げ、709億円になり、今後2018年~2023年までの年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate) 29.3%と高い成長率を維持して、2023年には、2,568億円(国内コンサルティングサービス市場全体の約25%)に達するとIDCでは予測しています。

コンサルティングファームの属性

コンサルティングファームは提供するサービスとクライアントの業界によって「戦略系」、「総合系」、
「スペシャリティ系(ブティック)」、「IT系」に大別することが出来ます。

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戦略系コンサルティングファーム

コンサルティング業界の中でも知名度が高く、グローバル展開している外資系ファームが多いのが特徴です。

戦略系コンサルの主な仕事は「企業の全社的な経営戦略、ビジネスモデル変革、新規事業開発、M&A戦略」など経営トップからの依頼によるものがほとんどです。若いうちから経営的な視点に触れたり、大きな仕事を任されたりする機会が多く、大きな責任とプロフェッショナルとしての高度なスキルを要求され、チャレンジングでやりがいのある環境で仕事ができます。最近は戦略の策定だけでなく、ハンズオン型の実行支援サービスやDXなどのITを駆使したコンサルティング領域まで手掛けるようになってきています。

戦略コンサルタントは事業会社出身のMBAホルダーやコンサルタント経験者が転職先として選ぶことが多く、一方戦略コンサルタント出身者は独立して起業する人が多いのも特徴です。

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総合系コンサルティングファーム

旧会計系ファーム(いわゆるBig4)が有名ですが、IT系企業を母体とし、ITだけでなくビジネスコンサルティングまでサービスの幅を広げてきたファームもここに位置付けられます。

事業戦略立案やIT戦略立案・システム化構想策定といったいわゆる上流フェーズから、業務改善、システム導入、そしてアウトソーシングサービスまで企業全体の経営課題に対してあらゆるコンサルティングサービスを幅広く手掛けています。比較的社員数が多く、業種別やサービス領域別に組織編成されている特徴がみられます。また、一概には言えないのですが、国内系のファームは外資系ファームに比べると海外出張や海外転勤の機会が多くなる傾向も見受けられます。

総合系のコンサルティングファームには戦略策定が得意な人からITエンジニア職まで幅広い人材がプロジェクトチームを組んで協業する機会が多く、スキルの幅を広げ、様々なタイプの案件に関わることができます。そのため、事業会社での業務経験や専門知識を生かして転職して活躍されるケースが多く、また新卒採用や第2新卒など若手の採用に積極的なファームが多くみられます。

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特化型コンサルティングファーム

特定業界や事業領域あるいは特定の戦略的課題に特化したコンサルティングファームです。

中小企業をメインターゲットにして、業績の向上に関するアドバイスを行う中小企業専門のコンサルティングファームもここに位置付けられます。

特化領域としてはマーケティング、組織人事、ヘルスケア、不動産、投資/M&A、事業再生、スタートアップ/ベンチャー支援など様々なものがあり、市場の将来を先取りした新しいサービスが次々と開拓されています。こうした新規領域については大手コンサルティングファーム出身者がスピンアウトしてベンチャーとして起業したコンサルティングファームも少なくなく、それぞれが経験してきたコンサルティング手法を活用しながらも新しいビジネス領域を開発しています。

また、中小企業を専門に扱うコンサルティングファームでは、中小企業診断士等の資格を持ったコンサルタントが経営戦略の立案だけでなく、現場に入り込みハンズオン型で実際に業績が向上するまで支援したり、顧問ととして長期間顧客のビジネスパートナーとして活動したりするファーム見られるのも特徴です。最近は中小企業の後継者不足が顕在化している課題となっていることを背景として、事業継承やM&AおよびPMIなどの領域で事業拡大が進んでいるように見られます。

こうした特化型コンサルティングファームでは大手コンサルティングファームからの転職者に加え、事業会社で培った特化領域での業務知識・経験を生かして転職する方々も多く見受けられます。大手コンサルティング会社経験者の創業者や幹部社員との距離が近く、大きな裁量を任され、早く経験値を積むことができる可能性があるところも魅力なのかもしれません。

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IT系コンサルティングファーム

ITの活用によって企業の課題解決をすることをコアコンピタンスとしているコンサルティングファームです。元々ITシステムベンダーであったりSI事業を営んでいた会社がサービス部門を拡充してコンサルティングサービスを手掛けるようになったり、子会社/関連会社としてコンサルティング会社を設立する場合もあります。

ITコンサルタントの主な仕事は「クライアント企業のニーズに合ったITシステムや技術の導入提案によるクライアント企業の課題解決」ですが、そうしたITシステムの活用はその前提として事業戦略の構築や業務効率の改善など業務変革を契機とする場合が多く、上流工程ではビジネスコンサルティングの領域とオーバーラップすることも珍しくはありません。また、システム開発そのものやその後の保守運用まで手掛けるファームもあり、SIerの事業領域とオーバーラップすることもあります。

また、最近では企業戦略や業務構築にITは避けて通れない領域であり、新しいITそのものが新しいビジネスモデルやサービス、新規事業開発を生んでいる状況にまでなっています。「デジタル関連コンサルティング」市場が大きく成長していくなかで、ITコンサルティングファームという区分が無意味になる日も近いのかもしれません。

ITコンサルティングファームで仕事をしているコンサルタントはITエンジニア出身者ばかりではありません。もちろんプログラマーやITプロジェクトマネジメント、パッケージエンジニアなどIT技術職が多いことは確かですが、業界知識や業務知識も求められることから、SIerからの転職者に加えて事業会社からの転職者も活躍しています。

コンサルティングファームの動向

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コンサルティングファーム
の動向

積極的なコンサルタント採用と求められるスキルセットのトレンド

不況時代のコンサルタント採用の抑制は緩和され、採用人数の増加計画が報告されています。特に、女性とミレニアル世代を採用し、雇用を継続することを支持しています。又、専門性の高いニッチスキルをお持ちの方に対する評価は高いという状況は依然ありますが、より全体を見渡すスキルセットを持つ方の採用を検討する傾向が出ています。 幅広いドメインの技術的な知識とビジネスのジェネラリストとしてのエッジが切れる洞察力を求めると大手グローバルファームの人事担当者は述べています。

イノベーションハブの新設

すでに国内でも大手3社が公表しているイノベーションハブの新設はグローバルレベルですでに先行して進んでいます。POCリサーチ、ラピッドプロトタイピング、製品ローンチの加速化などクライアントが最善のテスト、最新のサービス、製品を発見することを支援することから既述の通り、デジタルプラットフォームでのクライアントの価値創出のための支援を行うことを実行しようとしています。

クライアントの変化に対応する

コンサルティングファームではクライアントの変化、テクノロジーの変化にスピーディーに対応したサービスを開発し提供する必要があります。同時に、経営基盤を強化するという新しいサービスデリバリーとそれに必要なスキルセットがどのようなものであるかという攻めと守りの両面をより強く求められております。今後のデジタルの時代の喫緊の命題ではないでしょうか。

デジタルカンパニーへの挑戦

コンサルティングファームとデジタルカンパニーの関係が一層不明瞭となりつつあります。コンサルティングファームはデジタルのエキスパティーズをクライアントへ提供し、デジタルカンパニーはコンサルティングのケーパビリティを身に着けてきます。その中で前者は後者からエキスパートを積極的に採用したり、そのものをM&Aする動きが激化する可能性があります。