業務コンサルタントって何？　　戦略やITコンサルとの違いなどから徹底解説

業務コンサルタントとは

業務コンサルタントは、クライアント企業の業務プロセス改善や新たな業務フロー策定を支援する専門職です。企業が持つ業務の課題を分析し、より効率的かつ生産性の高い業務プロセスへと最適化する役割を担います。

業務コンサルタントの業務の中心には、クライアント企業の風土や現行の業務フローを深く理解し、最適な業務プロセスを導き出すことがあります。そのため、単なる業務改善提案にとどまらず、クライアント企業の現場が継続的に運用可能な業務フローを設計・構築する必要があります。特に、クライアントのニーズを的確に把握し、関係者と協議しながら進める必要があるため、高いコミュニケーション力が求められます。

業務コンサルタントの主な手法

業務コンサルタントは、経験に基づく改善策を提示するだけでなく、最新の手法やツールを活用しながら課題解決を図ります。主な手法として、以下のようなものがあります。

BPR（Business Process Reengineering）

企業の業務プロセスを抜本的に見直し、効率化・最適化を図る手法です。既存の業務の延長ではなく、ゼロベースで再構築することで、劇的なパフォーマンス向上を目指します。

BPM（Business Process Management）

企業の業務プロセスを継続的に管理・改善するためのフレームワークです。PDCAサイクルを回しながら、業務の最適化を進めます。

ERP（Enterprise Resource Planning）導入支援

企業の基幹業務を統合するERPパッケージの導入・最適化を支援します。業務の標準化やデータの一元管理を実現し、全社的な業務効率化を推進します。

業務コンサルタントの主なフロー

これらの手法は、近年のDX（デジタルトランスフォーメーション）推進や技術進化に伴い、ますます重要性が高まっています。企業が市場競争力を維持・向上させるために、業務コンサルタントの支援を受けるケースは増加傾向にあります。下の図もご確認ください

1. 現状分析（As-Is 分析）

クライアント企業の業務プロセスを詳細に把握することから始まります。業務フロー、組織体制、使用システム、データフローなどを可視化し、関係者へのヒアリングを通じて課題を洗い出します。また、業務効率やコスト構造を定量・定性の両面から分析し、問題点を明確にします。

2. 課題の特定と改善方針の策定

洗い出した課題を分類し、それぞれの影響度や優先度を整理します。競合他社や業界のベストプラクティスと比較し、改善すべきポイントを明確にしながら、目指すべき業務のあるべき姿（To-Be）を定義します。その上で、最適な業務改善の基本方針を策定します。

3. 業務改善施策の立案

改善のための具体的な施策を設計します。これには業務フローの変更、新システム導入、人員配置の最適化などが含まれます。BPR（Business Process Reengineering）、BPM（Business Process Management）、ERP導入、DX推進などの手法を活用しながら、施策ごとに期待される効果、導入コスト、リスクを整理し、実行計画を策定します。

4. 業務フローの設計・システム導入支援

新しい業務フローを具体的に設計し、ワークフローの可視化を行います。必要なシステムやツールの選定を行い、RFP（提案依頼書）の作成やベンダー選定を支援します。また、IT部門と連携しながら、システム要件定義や導入計画を策定し、スムーズな導入を進めます。

5. 実行・定着化（PoC・パイロット運用）

施策の実効性を検証するために、小規模でのPoC（Proof of Concept）やパイロット運用を実施します。企業文化や現場の受け入れ状況を考慮しながら、導入計画をブラッシュアップし、経営層や現場へのトレーニングを実施します。また、業務マニュアルの作成を支援し、現場が円滑に新しい業務フローを運用できるようにします。

6. 効果測定・継続的改善

新しい業務プロセスが適切に運用されているかをKPI（重要業績評価指標）を用いて測定します。その結果をもとに、必要に応じて業務フローの微調整や追加施策を実施します。DXや市場環境の変化に応じたさらなる業務改善の提案を行い、継続的な最適化を図ります。

業務コンサルタントと戦略コンサルタントの違い

業務コンサルタントと戦略コンサルタントは、企業に対してコンサルティングを提供する点では共通していますが、その目的やアプローチには大きな違いがあります。

業務コンサルタントは、企業の業務プロセスに焦点を当て、現場の業務フローを最適化することが主な役割です。業務効率の向上やコスト削減、システム導入など、企業が日々の業務を円滑に進めるための具体的な施策を設計・実行します。クライアント企業の現状を詳細に分析し、BPR、BPM、ERP導入などの手法を用いて、業務改革を進めます。

一方で、戦略コンサルタントは、企業の経営戦略や市場戦略の策定を支援することが主な役割です。業界の動向や競合分析を行いながら、新規事業の立ち上げ、M&A、海外展開、収益モデルの再構築など、企業の長期的な成長戦略を策定します。経営層とのディスカッションが多く、財務データや市場分析に基づいた意思決定の支援を行います。

簡単に言えば、業務コンサルタントは「現場の改善」に焦点を当てるのに対し、戦略コンサルタントは「経営レベルの意思決定」に関与するという違いがあります。ただし、両者が連携することも多く、戦略コンサルタントが策定した経営戦略を具体的な業務プロセスに落とし込む役割を業務コンサルタントが担うケースもあります。

業務コンサルタントとITコンサルタントの違い

業務コンサルタントは、企業の業務プロセスを最適化することを目的とし、業務フローの設計や改善に重点を置きます。BPRやBPMなどのフレームワークを活用しながら、業務改革を推進するのが特徴です。

一方で、ITコンサルタントは、企業のIT戦略の策定やシステム導入を主な支援領域とします。業務の効率化を図るために適切なITツールを選定・導入し、ITインフラやセキュリティ対策などの技術的な支援も行います。

業務コンサルタントが業務のプロセス改善を主眼とするのに対し、ITコンサルタントはテクノロジーを駆使して業務改革を実現する役割を担っています。両者が連携することも多く、業務コンサルタントが策定した業務改革の方針に基づいて、ITコンサルタントがシステムを導入・最適化するケースが一般的です。

業務コンサルタントを目指しやすい経験

業務コンサルタントには、業務プロセスの分析や改善を行うための専門知識と実務経験が求められます。特に以下のような経験を持つ人は、業務コンサルタントとして活躍しやすい傾向にあります。

特定業界の業務知識

金融、製造、流通、小売、医療、物流など、特定の業界に精通している人は、その業界特有の業務プロセスを理解しているため、業務コンサルタントとして価値を発揮しやすい。例えば、製造業においてSCM（サプライチェーンマネジメント）の経験がある人や、金融業界でリスク管理やコンプライアンス業務に携わったことがある人は、その業界向けの業務改善コンサルティングに適している。

IT業界での業務経験

システム導入や業務のデジタル化に関与した経験がある人は、業務コンサルタントとして適性が高い。特にERP（SAP、Oracle、Microsoft Dynamicsなど）の導入プロジェクトに携わったことがある人は、業務プロセスの理解が深く、企業の業務改革を支援しやすい。また、RPAやクラウド導入などのデジタル技術を活用した業務改善の経験も大きな強みになる。

経営企画や業務改革の経験

企業の経営企画部門で働いた経験がある人や、業務改革プロジェクトに携わったことがある人も、業務コンサルタントになりやすい。事業戦略や業務プロセス改善に関する知識があり、プロジェクトマネジメントのスキルを活かして業務改善を推進できるため、クライアント企業の改革を主導しやすい。

BPR（業務プロセス改革）や業務設計の経験

既存の業務プロセスを分析し、業務フローを最適化した経験がある人は、業務コンサルタントとしての素養を備えている。特に、業務フローの設計やKPIの設定、業務標準化の経験があると、クライアント企業の業務改革を具体的に進める力があると評価されやすい。

データ分析・BIツールの活用経験

業務改善の一環として、データ分析やBIツール（Tableau、Power BI など）を活用した経験がある人は、業務の可視化や課題発見能力が高く、クライアントに対してより効果的な提案ができる。また、データを活用した意思決定プロセスの構築や、業務の定量的な評価を行った経験も、業務コンサルティングで求められるスキルとなる。

業務コンサルティングに強いコンサル企業（代表的な企業）

近年の業務改革はIT導入を前提とすることが一般的になっており、そのため総合系コンサルティングファームでの募集が多く見られます。一方、戦略系ファームでは業務改革を専門とするポジションは少なく、主に経営戦略や新規事業開発を中心としたコンサルティングが行われる傾向にあります。業務コンサルティングに強い企業は、総合コンサルファームをはじめ、IT特化型や業界特化型の企業など多岐にわたります。ERPやDXに強い企業、業界に精通した企業など、自身の志向に合わせて選ぶことが重要です。下記は一例です。

今後の展望・将来性

DXの加速により、多くの企業が業務のデジタル化や効率化を進めています。AIやRPA（Robotic Process Automation）などの技術を取り入れながら、より高度な業務改善を求める企業も増えており、業務コンサルタントの需要は今後さらに拡大すると考えられます。

また、業務コンサルタントは特定業界に精通していることが強みとなるケースも多いため、業界ごとの専門知識を持つコンサルタントの価値は一層高まるでしょう。