新規事業コンサルタントとは　戦略との違いや市場動向、将来性など　徹底解説

新規事業コンサルタントとは？

新規事業コンサルタントは、企業や起業家に対して新規事業立ち上げに関する専門的なアドバイスを提供し、事業の成功に向けた戦略策定や実行支援を行う職業です。市場調査や競合分析、事業計画の策定だけでなく、実際の事業運営の伴走支援も行う点が特徴です。

企業が新規事業を成功させる確率は決して高くなく、2017年版「中小企業白書」によると、新規事業を展開して成功した企業は全体の28%、2022年のパーソル総合研究所の調査によると約30％にとどまります。そのため、新規事業の成功率を高めるために、新規事業コンサルタントの支援が求められています。

新規事業コンサルタントの主な業務

業務フローは写真のようなものが多いと思われます。ただ、ファームによって様々です。

1. 市場調査・競合分析

新規事業の成功には、適切な市場調査と競合分析が欠かせません。新規事業コンサルタントは、ターゲット市場の動向を把握し、市場規模や成長性を分析します。また、競合企業の強みや弱みを調査し、クライアントが優位性を持てる領域を特定します。市場のニーズを的確に捉え、事業の方向性を決定するための重要なプロセスです。

2. 事業戦略の策定

市場調査と競合分析の結果をもとに、新規事業の方向性を定め、戦略を策定します。事業のビジョンやミッションを明確にし、具体的なビジネスモデルを構築します。また、収益化の仕組みやマーケティング戦略、営業戦略を検討し、事業が持続的に成長するための計画を立案します。クライアントの経営資源やリスク要因も考慮し、実現可能な戦略を構築することが求められます。

3. 事業計画の作成

策定した事業戦略を基に、具体的な事業計画を作成します。成功の指標となるKPI（重要業績評価指標）を設定し、短期・中長期の目標を明確化します。また、財務計画や予算管理の枠組みを設計し、収益モデルを可視化します。さらに、事業のリスクを洗い出し、リスクマネジメントの施策も組み込むことで、計画の実現可能性を高めます。

4. 事業の実行支援

新規事業の計画を実際に動かしていく段階では、テストマーケティングの実施や事業プロセスの最適化を支援します。仮説検証を繰り返しながら、サービスやプロダクトの方向性をブラッシュアップし、市場に適応できる形に仕上げます。また、必要に応じて人材戦略の策定も行い、適切なチーム編成をサポートします。新規事業がスムーズにスタートできるよう、実行フェーズを支援することもコンサルタントの役割です。

5. 伴走支援・実行サポート

事業開始後も継続的な支援を行い、計画の軌道修正や改善を図ります。コンサルティング会社によっては、実働部隊として業務を遂行し、クライアントと一体となって事業の推進をサポートすることもあります。事業計画を定期的に見直し、KPIの達成状況を確認しながら、PDCAサイクルを回し、より確実な成長へと導くことが求められます。戦略だけでなく、実行に移す行動力を提供することが、新規事業コンサルタントの強みです。

新規事業コンサルティングの特徴

新規事業コンサルティングは、一般的な戦略コンサルティングとは異なり、以下の特徴を持ちます。

✅実践的な支援
単なる戦略立案にとどまらず、実際のテストマーケティングや事業推進まで支援するケースが多い。

✅多面的なアプローチ
マーケティング、営業、財務、人事、テクノロジーなど、幅広い分野の知識を活用する必要がある。

✅不確実性の高い環境での支援
市場が確立されていないビジネス領域でのコンサルティングとなるため、柔軟な思考と高い問題解決能力が求められる。

✅成果へのコミットメント
戦略だけでなく、クライアントと一緒に成果を出すための行動支援を行う。

新規事業コンサルティングを行う会社の一例

以下に新規事業コンサルを行う企業の一例を記載しています。他にも新規事業コンサルを行っている企業は多くあります。詳しく知りたい方はお問い合わせください。

戦略コンサルと新規事業コンサルの違い

主な目的・役割の違い

項目	戦略コンサルタント	新規事業コンサルタント
目的	企業の中長期的な経営戦略の立案・実行支援	新規事業の立ち上げと成長支援
支援範囲	企業全体の戦略策定やM&A、コスト削減、グローバル展開など	新規事業の市場調査、事業計画策定、立ち上げ支援、事業開発

戦略コンサルは、企業の競争力を高めるための大局的な戦略を策定します。一方、新規事業コンサルは、新たなビジネスを生み出すことに特化し、事業の実行まで深く関与する点が特徴です。

業務内容の違い

業務内容	戦略コンサルタント	新規事業コンサルタント
市場調査・競合分析	業界全体やグローバルな市場動向を分析	具体的なターゲット市場や顧客ニーズを深掘り
戦略策定	企業の成長戦略、M&A戦略、事業ポートフォリオの最適化	事業モデルの構築、収益化戦略の設計
組織・オペレーション設計	組織の最適化、業務効率化、コスト削減戦略	新規事業チームの立ち上げ、人材配置の計画
実行フェーズ	戦略提言が主で、実行はクライアント企業が担当	実際にテストマーケティングやPoC（概念実証）に関与
支援期間	数カ月〜1年程度のプロジェクト単位	事業が軌道に乗るまで中長期にわたる支援

戦略コンサルは「方向性を示すこと」が主な役割であり、クライアント企業が自ら実行に移すケースが多いです。一方、新規事業コンサルは「事業を形にすること」が目的であり、実行支援まで行う点が大きな違いです。

成果指標の違い

項目	戦略コンサルタント	新規事業コンサルタント
成功の指標	企業の収益性改善、市場シェア拡大、コスト削減など	新規事業の市場適合性、売上成長、事業の継続性
求められる成果	戦略の有効性、経営層への提言の妥当性	事業が実際に軌道に乗るか、収益化できるか

戦略コンサルの成果は「企業の方向性を決めること」、新規事業コンサルの成果は「事業を成功させること」にあります。

クライアント層の違い

クライアント	戦略コンサルタント	新規事業コンサルタント
対象企業	大手企業、グローバル企業が中心	大企業の新規事業部門、スタートアップ、ベンチャー企業
関与する部署	経営企画部、CXO（CEO、CFOなど）	事業開発部門、マーケティング部門

戦略コンサルは主に経営層にアドバイスを提供し、企業の全体戦略に影響を与えます。一方、新規事業コンサルは現場の事業開発担当者と連携しながら、具体的な事業立ち上げを支援します。

必要なスキルの違い

スキル	戦略コンサルタント	新規事業コンサルタント
論理的思考力	高度なデータ分析とロジカルシンキングが必須	アイデアを事業に落とし込む発想力も重要
財務分析力	企業の財務状況を分析し、経営戦略を提案	事業の収益モデルを設計し、採算性を評価
市場理解	グローバル市場やマクロトレンドを分析	業界ごとの具体的な市場ニーズを深掘り
実行力	戦略策定がメインで実行支援は限定的	事業を推進するためのプロジェクト管理能力が必要

戦略コンサルタントは論理的思考力や財務分析能力が求められますが、新規事業コンサルタントは、実際に事業を形にする実行力や創造的思考も求められます。

戦略コンサルが「企業の未来を描く」仕事であるのに対し、新規事業コンサルは「新しいビジネスを実現する」仕事 です。企業の経営方針を決めたい場合は戦略コンサル、具体的に新規事業を立ち上げたい場合は新規事業コンサルが適しています。

新規事業コンサルタントの市場動向と将来性

市場動向

新規事業コンサルティング市場は、近年の企業の事業多角化ニーズやデジタル変革（DX）の進展を背景に急成長しています。特に以下の要因が市場を牽引しています。

✅ 既存事業の成長鈍化

多くの大手企業では、既存事業の成長が頭打ちになり、新たな収益源を求める動きが活発化。特に伝統的な業界（製造、金融、小売など）では、DXを活用した新規事業開発が重要視されている。

✅ DX（デジタル・トランスフォーメーション）の加速

AI、IoT、ブロックチェーン、フィンテック、SaaSなどのデジタル技術を活用した新規事業の開発が増加。これに伴い、新規事業コンサルタントは単なる戦略支援だけでなく、テクノロジー活用の知見を求められることが多くなっている。

✅ オープンイノベーションの拡大

大企業とスタートアップの協業が活発になり、CVC（コーポレート・ベンチャー・キャピタル）やアクセラレータープログラムを活用した新規事業の開発が増えている。これに伴い、事業会社とスタートアップを橋渡しするコンサルタントの需要も高まっている。

✅ 政府の支援策とスタートアップエコシステムの成長

日本政府もスタートアップ育成や新規事業創出を強化しており、「スタートアップ支援策」や「グリーン成長戦略」などの政策により、ベンチャー企業との協業や新規事業投資の機会が増加。新規事業コンサルタントの役割はより重要になっている。

✅ ESG・サステナビリティ関連事業の台頭

環境・社会・ガバナンス（ESG）を重視したサステナブルビジネスが急拡大。脱炭素やサーキュラーエコノミー（循環型経済）をテーマにした新規事業の開発が進み、コンサルティングの需要も高まっている。

新規事業コンサルタントの将来性

新規事業コンサルタントの需要は今後も拡大すると予測されます。その理由は以下の通りです。

💡 企業のイノベーション投資の増加

大企業は成長戦略の一環として、研究開発（R&D）や新規事業創出に多額の投資を行っており、外部の専門家であるコンサルタントの活用が増えている。

💡 DX・デジタル事業の専門人材不足

新規事業を立ち上げるには、データ分析・AI活用・クラウド導入などのスキルが必要。しかし、多くの企業では専門人材が不足しており、コンサルタントのサポートが不可欠となっている。

💡 スタートアップの増加と企業との連携強化

日本国内でもスタートアップが増加しており、大企業とスタートアップの連携を支援する新規事業コンサルタントの役割はより重要になっている。アクセラレーターやCVCを活用した支援が増えており、コンサルタントの活躍の場が広がっている。

💡 グローバル市場への挑戦

新規事業は国内市場だけでなく、グローバル展開を視野に入れるケースが増加。特にASEAN市場や北米市場に進出する企業が多く、海外展開を支援できるコンサルタントの需要も高まっている。

💡 「事業開発＋実行」のスキルが求められる

戦略だけでなく、実行フェーズの支援までできるコンサルタントが求められている。机上の空論ではなく、PoC（概念実証）やテストマーケティングを支援できる専門家が今後さらに重宝される。

今後の課題と求められるスキル

新規事業コンサルタントは今後も活躍の場が広がる一方で、以下の課題も存在します。

📌 成果創出の難易度の高さ

新規事業は成功率が低く、短期間で確実な成果を出すことが難しい。そのため、コンサルタント自身が事業責任者としての視点を持ち、リスクをコントロールしながら事業を推進する能力が求められる。

📌 実行力の強化

従来のコンサルタントの役割は「戦略提案」に重点が置かれていましたが、今後は実行支援や事業運営のスキルも重要視される。特に、スタートアップのようなアジャイルな開発手法や、データドリブンな事業運営ができる人材が求められている。

📌 テクノロジーリテラシーの必要性

DX時代において、新規事業コンサルタントには、データ分析・AI・ブロックチェーン・IoT・SaaSビジネスなどの知識が不可欠。これらの技術を活用した新規事業開発に携わる機会が増えているため、コンサルタントもITスキルを身につける必要がある。

📌 グローバル対応力の強化

今後の成長市場はASEAN・インド・アフリカなどの新興国にシフトしており、海外市場を理解し、現地パートナーと連携しながら事業を開発できるコンサルタントの価値が高まっている。

新規事業コンサルタントのまとめ

新規事業コンサルタントは、企業や起業家の新規事業立ち上げを支援し、市場調査から戦略策定、実行支援まで幅広く関与する専門家です。単なる戦略提案にとどまらず、事業の成長を実現するための実践的なサポートを行う点が特徴です。

企業の成長戦略として新規事業開発の重要性が増しており、特にDXの推進、オープンイノベーション、ESG経営、グローバル展開といったトレンドが市場を牽引しています。しかし、新規事業の成功率は決して高くなく、的確な市場分析と柔軟な事業運営が求められます。そのため、事業の実行力を備えたコンサルタントの存在がますます重要になっています。

また、今後の新規事業コンサルタントには、デジタルテクノロジーの理解、アジャイルな事業推進、データ活用スキルが必須となり、グローバル市場にも対応できる視野が求められます。企業が競争力を維持し、新たな成長を遂げるためには、戦略立案だけでなく、事業の実行をリードする専門家の支援が不可欠です。

新規事業コンサルタントは、未来のビジネスを創るパートナーとして、企業のイノベーションを加速させる役割を担う存在です。今後もその市場価値は高まり続けるでしょう。