今回はPwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)ガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部 (以下、GRC)のリードパートナーである高木様にお話を伺ってきました。
目次
多様性を尊重し合えるプロフェッショナルがスクラムを組み、経営目線を養う
高木様のご経歴について教えてください。
日本の大手監査法人にて会計監査業務を経験した後、香港オフィスに赴任し、日系企業の現地進出を支援しました。帰国後は、外資系のメガファーマや日系の大手事業会社に在籍し、税務業務や海外グループ会社のリスクコンプライアンス監査、中期経営計画の編成やKPIの設定・評価業務など幅広い経験を積みました。その後これまで培ってきた知見を活かし、日本企業のコーポレートガバナンスや海外展開の強化に尽力したいという思いから、2015年にPwCあらたに入社しました。
現状のGRC組織および事業内容について教えてください。
企業を取り巻く環境の変化が激しさを増し、経営環境がより厳しくなる中、経営の基盤となるガバナンス、リスク、コンプライアンスに対する社会の要請や期待、さらには法令や監督当局による要求、監督目線がますます高まっています。そこでGRCでは、GRC領域の圧倒的な専門性を武器に、このような社会の変革に対峙する大手金融機関やグローバル企業等のクライアントが抱える重要な経営課題の解決を支援しています。
組織としては、既に250名超の人員を擁しておりますが、近い将来300名体制規模の実現を目指しています。なお、マーケットの成長に伴い、非常にニーズが高い分野ですので、今後は2桁成長を継続的に続けていきたいと考えております。
GRCにおいて組織統合が行われたかと思いますが、その背景について伺えますか。
まずGRCは対応する領域が広いため、それなりの体力を持たなければなりません。企業の全社的なガバナンスやリスク管理の他、最近のトレンドとして、企業外部のサプライチェーン全体のリスクも見る必要があり、このような大規模かつ複雑化している課題に対しては大きい部隊で取り組むべきであると考えました。そこで、金融・非金融部門を1つに統合することで将来への投資が実現できる体制にし、金融・非金融部門が持っているお互いの深い知見を、横に展開して対応力を広げられるようにしました。
実際に在籍しているコンサルタントはどのようなバックグラウンドでどのようにご活躍されているのでしょうか。
GRCには現時点で12か国のメンバーが在籍しており、適材適所で、いろいろな国の企業課題に対応しています。なお、海外子会社のリスク管理の状況を見てきてほしいという依頼も多く、メンバーが海外出張しているケースが非常に多いです。日本にいながらもグローバル感を味わえる環境です。
バックグラウンドとしても、公認会計士や弁護士、内部監査人、情報セキュリティ関連経験者の他、出身業界としてもマスコミや金融など非常に多様性に富んでいるため、普段の会話から学び続けることができることも魅力の1つかと思います。多様性を尊重し合えるプロフェッショナルがスクラムを組みながら多様化するリスクに対応するという環境に身を置くことで、コンサルタント個人としても広い領域に関わることができ、経営について多角的にとらえた広い視野と高い視座を身に付けることができるのではないでしょうか。
グローバルカンパニーの経営基盤の向上に向き合い続けるGRC
そもそも、監査法人がリスクアドバイザリー領域を強みとするようになった背景について伺えますか。
監査は会社全体のガバナンスやコントロールを見ながら、リスクが高そうなところを中心にチェックするリスクアプローチという基本的な考え方があります。さまざまな企業の監査を行うことで培われた専門性を活かして、企業のガバナンスや内部統制をリスクの観点から助言できる経験値を持った人財が多くなりました。その知見を横展開してクライアントの要望に応えつつ、多くの新しいメンバーを迎えることで、ビジネスとしてここまで拡大してきた経緯があります。
どのようにして対応できるリスクアドバイザリーのケイパビリティを広げてきたのでしょか。
イメージとして企業の土壌となるガバナンスがあり、その中の一部にリスクマネジメントがあり、リスクマネジメントの概念の1つとして内部統制があります。さらに内部統制は財務・非財務の領域に分かれており、サービスを立ち上げた当初は財務領域を中心に助言をしていましたが、その後は非財務の領域まで見方を広げてきた経緯があります。リスクアプローチに基づく内部統制からリスクマネジメントへとスキルが広がり、さらにリスクマネジメントが広がるとガバナンスへとつながっていきます。その成長にあわせて私たちのケイパビリティも広がってきました。
今GRCが向き合っているクライアントの課題というのはどのようなものでしょうか。
この点についてはさまざまな課題が出てきているのが現状です。社会的に見ても、コーポレートガバナンスの高度化については国を挙げて取り組んでいます。なお、親会社内のガバナンスのみならず、グローバルに広がる子会社のグループガバナンスも高度化する必要があるため、コーポレートガバナンスとグループガバナンス両面でのニーズがあります。
続いてリスクマネジメントですが、ビジネスを行うにはリスクとリターンの両面があり、すべての領域でリスクが関連してきます。それに伴い私たちもあらゆるリスクに対応できるように幅広い人財をそろえています。現在の世の中は変化が激しく、その変化自体がリスクをもたらすため、企業も複雑なリスクに対して素早い対応が必要となっており、コンサルタントに対する期待は高まっています。
コンプライアンスについては、現在の分断された社会で国ごとにルールが異なっていますので、企業としてもそれらを理解して統制していくことが必要となります。私たちは企業のG(ガバナンス)・R(リスク)・C(コンプライアンス)の脆弱性が、クライアント企業の成長の妨げにならないように支援することを心掛けています。
監査法人に所属するGRCアドバイザリーとPwC Japanグループ内の他のアドバイザリー部門との違いについて教えてください。
PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)内には、PwCあらた以外でもアドバイザリー業務を行っている部門があります。このようなアドバイザリーを専門とするメンバーと法人の壁を越えて一緒にプロジェクトを行うことも多いです。企業側は戦略的要素や外部の地政学の変化によってさまざまなリスクに直面しています。それらに対応するためには、お互いに培ってきた強みや専門性を補い共有することで、知見を深め、高め合うことが必要となっています。あくまでも私のイメージですが、監査法人は特定の深い専門性からさらに別の専門性を深めることで横に広げていき、他のアドバイザリー部門では会社の重要課題という高くて広いところから、さまざまな専門家と協業することでどんどん知見を深堀して行くイメージに近く、山の登り方は違ったとしてもゴールは同じだと考えています。これはPwCの風通しが良く、チャレンジを認めるカルチャーに根付いているためと思いますが、自分の専門領域を磨きながらX-LoS(クロスロス、Cross Line of Services)でさまざまなチームと一緒に働くことができるので、お互いに専門性を深めていくことができる環境であると認識しています。
GRCの分野は変化のモニタリングをし続けることが必要です。また企業の成長に伴って新たなイシューが生まれ続ける分野でもあります。過去の経緯も含めて知っていることが大事になるため、クライアントと長く付き合い続けることでサステナブルに成果を出すことを目指しています。私自身、PwCあらたに入社してからずっとお付き合いをさせて頂いているクライアントがありますが、今後も良い関係を継続していきたいと思っています。
加えて、GRCの分野はコーポレートガバナンスの支援も多くなるため、相対する対象が取締役陣などの経営ボードとなることも多く、グローバルカンパニーの幅広い階層と向き合うことになるのも特徴だと思っています。
また、「企業会計」「法律」「税務」などの専門家の力も借りることも多々あるので、PwC税理士法人やPwC弁護士法人との協業も多々あり、PwC Japan内でのネットワークが広がり、顔が広くなります。
さらに前述の通り、クライアントの海外子会社に直接出向いて状況確認やガバナンス構築を行っていくこともあり、海外を飛び回るメンバーも多いです。
自分の知らない世界に飛び込み、自分の知らない世界を知っている専門家から吸収し、自分の見識を拡げる。そしてその見識を持って世界を股に掛けクライアントに貢献する。
そんなアクションを取っているのがGRCアドバイザリーの特徴だと思います。
今後のクライアント企業の変化についてはどのようにお考えですか。
ガバナンス・リスク・コンプライアンス態勢が整備されてくると、より一層デジタル化による情報連携が進み、情報収集・分析業務も自動化・高度化されて行くと考えています。取り扱う情報量も飛躍的に増えることから、テクノロジーの活用がより一層進み、人はより高度な判断に時間を割くことができるようになると考えます。また情報連携の範囲が拡大されれば、組織形態の違いに伴う新たなガバナンスが必要となるように、時代の変化に応じてリスクガバナンスのストラクチャーも変化していくため、私たちもそこに合わせて先を行く進化を求めなければいけないと感じています。私たち外部の知見を上手く活用頂きながら、クライアントと共通の目的を持って変革を進めることで、ともに成長していくことができればと思っています。
GRCとしての成長とコンサルタント一人一人の働きやすさを追求する「両立の経営」
組織としての今後の展望について教えてください。
GRCはサステナブルな成長を目標としており、それを「両立の経営」により実現していくことを目指しています。
マーケットのニーズが非常に高く、成長する機会をどんどん提供していきたい一方、やはり人財は非常に大事ですので働きやすい環境も整備したい。その2つを両立させるのが「両立の経営」です。これまでの激務のコンサルタントというイメージを払拭すべく、あえてスローガンとして全面に押し出して改善を加えています。「両立の経営」の実現に向けて、共通の目的を持って長く一緒に働ける環境を整備していきたいと考えています。
具体的にどのような改善を加えているのでしょうか。
企業のトランスフォーメーションの必要性が高まり、それに伴い私たちが提供するサービスへの期待値も高くなってきています。トランスフォーメーション実現には高い知見や経験が必要となるため、私たちは人財育成に特に注力しています。私たちはマザーケースと呼んでいますが、ナレッジのマネジメントと人財育成、加えてお客さまへのマーケティング業務をリンクさせる仕組み作りを進めています。「両立の経営」を実現するためには生産性と効率性を高めないといけないため、私たちパートナーもしっかりと連携を図って取り組んでいます。
人財育成の一環として、先端的なプロジェクトにおいては多くのコンサルタントが入り、経験・知見を深める機会を設け、次のプロジェクトで活かせるようにしています。そのようなマザーケースとなる仕組み作りをどんどん進めていき、クライアントのニーズを満たせるようにしていきたいと考えています。
クライアント企業と長くお付き合いされている中で、今のリスクと昔のリスクでどのような違いがあると感じていますか。
最近は外部環境の変化が激しいため、想定外のリスクに対して、経営層を巻き込んだ対応が必要となるケースが増えていると感じます。以前はボトムアップでグローバルのリスクを拾い上げてほしいという案件が多かったと思いますが、最近は、全社的に影響を与える可能性が高い重大リスクに対して、トップダウンで対応、管理することがより重要となっています。
自社のバリューチェーンでは完結しないリスクやルールに従っているだけでは足りないリスク、またはESGのように中長期的視点で発生するリスクも増えてきています。外部環境の変化に伴う大きなリスクに対して、情報を収集して分析するインテリジェンス要素が必要となり、そこに絡む新たなリスクもあるためにリスクガバナンスが重要となっています。複雑化しているリスクに対応するためには、経営層を巻き込んで対応するリスクと内部統制を整備することで現場側に任せられるリスクを整理し、それらに対してPwC JapanがX-LoSの姿勢で、クライアントの課題解決の支援に当たっています。
非常にスケールの大きい領域になりますね・・。
先に述べたように、土壌となるガバナンスは全社レベルであり、すべてのオペレーションにはリスクがつきものです。また、コンプライアンスに対してもレギュレーションが複雑化しているのが現実です。PwCのグローバルネットワークを上手く活用しながら、デジタルコミュニケーションによるクライアントのグループ内での情報共有の仕組み作りも積極的に支援していきたいと思っています。大量のデータを扱うようになると、人間の分析だけでは追いつかなくなるため、AIを活用した情報の分析など、今後もGRCは成長していく余地は十分にあると見込んでおります。
GRCの領域は変化が激しい一方で、ガバナンスやリスク管理に対する重要性は今後も変わらないため成長領域であると考えています。
これまでの内容を踏まえ、どのような方にご入社していただきたいですか。
多様化するニーズに対応するため、さまざまな専門性を持った方にきていただきたいですが、特にグローバル経験のある方・デジタルスキルがある方・GRCの領域に専門性がある方は親和性が高いかと思います。PwCあらたのGRCだからこそ、頻度高めで携われる業務もあり、変化を好み、どんどん成長していきたいというマインドを持っている方であれば、さまざまなプロジェクトに関わることで、加速度的な成長が可能と考えています。
GRCで関わるテーマは多岐にわたるため、さまざまなクライアントのグループ会社を含めたグローバル経営目線を養うことができます。ここで一定の経験を積むと社外取締役としての目利き力も身に付けることもできますし、特定の領域を掘り下げていくのであれば、CFOや監査部長、コンプライアンス部長など広いキャリアを追求することができると思います。専門家として一つの強みを掘り下げるもよし、その専門性を末広がりにのばしていくのも良し。私たちは、各自が目指すキャリアの創造を支援していきたいと考えていますので、「グローバルな経営」に向き合うことに興味がある方は、ぜひ門戸をたたいてほしいと思っています。
※この記事は2023年7月時点の社名を利用しています。