1. 製造業の概要
今回は「製造業」についてお話しします。製造業、いわゆる「重厚長大産業」は、日本の基幹産業の一つです。この産業は細かく分かれているところもあれば、分かれていないところもあります。分かれていない場合は、専門ユニットを作れるほどコンサルタントや顧客がいない可能性が高く、その領域の専門性が高かったり顧客リレーションが強かったりする人がディレクターやパートナーなどのポジションに昇進しやすいというのはちょっとしたTipsです。
インダストリーコンサルタントインダストリアルプラクティスという名称を使うこともありますが、「Industrial」「Chemical」「Process」「Manufacturing」「Product」といった英語名が含まれているユニットがこの領域に該当します。
2. 製造業が向き合うテーマ
脱炭素
製造業は水と火と資源を大量に使い、環境負荷が高い産業です。地球の持続可能性が問われる今、製品やプロセスが環境に与える負荷を削減することが求められています。具体的には、排出物や廃棄物の削減、温室効果ガスの排出削減、化学物質のリスク評価や管理などが挙げられます。再生可能エネルギーの利用、廃棄物のリサイクル、省エネルギー技術の導入などのサステナブルな製造プロセスの採用が必要です。
サプライチェーンの管理
ESG経営に関しては、自社の最終製品だけでなく、その最終製品を作る構成要素を提供するサプライヤーの経済活動状況も把握し、開示することが求められます。持続可能な調達のために、サプライヤーの炭素排出量や人権配慮なども厳格にチェックしなければなりません。また、グローバルな政情不安やパンデミックリスクなど、製品生産に関わるリスクが増えたため、サプライチェーン全体のリスク管理が重要です。
新技術の導入
環境に優しい生産プロセスや製品の開発、競争優位を築くためには、イノベーションに積極的に投資する必要があります。しかし、どのテーマでどのようなイノベーションを起こし、どれだけの資金を投入するかの意思決定は難しいものです。自社の知的財産の活用戦略やスタートアップとのアライアンス、M&A推進など、自社技術の育成と活用が重要なテーマです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)
これまでの歴史で培われてきた仕事の進め方を大きく変えることが求められています。基幹システムはほとんどの場合、驚くほど古くなっており、そのシステムがどのような仕組みで作られているかを理解している技術者も少なくなっています。長年更新を重ね追加開発を進めてきた巨大システムを大きく変革できる人材が求められています。
3. 必要な経験と知見
製造現場のリアルな経験
生産管理、生産技術、調達、購買など、ものづくりの現場経験が求められます。コンサルタントはクライアントの業界の中の人ではないため、実際に現場で働く人のリアルな状況を理解し、改善案を進めるために共通言語で話せる力が重要です。特に機械系の組み立て型製造業と化学系のプロセス型製造業ではアプローチが異なるため、それぞれの業界の特異性を理解していることが強力な武器となります。
俯瞰的な視座での経験
ジョブローテーションで複数の組織を渡り歩いた経験や、事業企画・経営企画部門での課題解決経験が求められます。インダストリーコンサルタントは、テーマ問わず広く向き合うことが求められるため、特定領域の専門性だけでなく、幅広い視野で課題に対応できる力が必要です。
システム改編などの大型プロジェクトの推進経験
歴史ある重厚長大産業で物事を動かす難易度は高く、複雑なプロセスを整理し、ステークホルダーをまとめて進める上で、失敗経験も含めた豊富な経験が求められます。こうした経験が、コンサルタントとしての強みとなります。
4. 製造業の未来
日本における製造業は、「ものづくりの日本」をけん引してきたプレイヤーです。これまで培ってきた知見を活かし、トップ企業のさらなる成長を支援することは、「この国をもう一度建て直す」というビッグイシューに挑むことと言えるでしょう。
5.まとめ
製造業のインダストリーコンサルタントが向き合う顧客は、総じてものづくりの日本をけん引してきたプレイヤーです。向き合う課題は、脱炭素、サプライチェーン管理、新技術開発、デジタルトランスフォーメーション(DX)などです。活かせる能力や経験は、製造現場のリアルな経験、俯瞰的な視座での経験、大型プロジェクトの推進経験などです。
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