Industry/自動車産業編~総合コンサル大解剖~

転職コラム

1. 自動車産業の概要

今回は「自動車産業」についてお話しします。日本の総労働人口のうち10%近くがこの業界での仕事に従事しており、まさに日本の基幹産業と言っても過言ではありません。

この産業は、「コンシューマビジネス」と「製造業」の二つの性格を併せ持ちます。重厚長大な作り方でできた製品を、一般消費者に対して販売します。しかも、それが高額耐久消費財というカテゴリーになるため、「自動車ローン」や「自動車保険」といった金融サービスが絡んだり、故障修理などのアフターセールスビジネスも存在します。ビジネスモデル自体も複雑で、さらにSDGsや脱炭素によるゲームルールの変化、テックジャイアントの参入などにより、大変革期にあるのが現在の自動車産業です。

2. 自動車産業が向き合うテーマ

存在意義の再考

自動車業界の変革キーワードである「Connected Automatic Share Electric(CASE)」への対応が進む中、自動車メーカーは「自動車を作って売る」ことが本質的な存在意義なのか?という問いが生まれています。自動運転車やシェアリングサービスなど、新しいモビリティサービスの提供やクラウド技術、人工知能などの技術を活用したサービスの質の向上など、メーカーとしての存在意義を見直し、新たなサービスの在り方を創り出すステージに来ています。

ビジネスモデルのピボット

特に従来の自動車部品メーカーに顕著な例です。部品のEVシフトや水素技術対応など、新技術や概念に早急に対応する状況を創り出し、生産体制や営業体制を大きく変えることが求められています。

合従連衡による新たな価値創造

自動車メーカーがモビリティサービスカンパニーに変わりつつあり、自動車部品メーカーもそれに追随した変革が求められています。「一企業だけの変革」では実現できないことが多く、EV普及のための充電スタンドの普及やコネクテッドカーのサービスの拡張などは、メーカーだけでなく、官公庁のまちづくりやそのまちで事業を営むサービス業との提携も必要です。このため、「どの業界においても中立的な立場」であるコンサルティングファームの存在が求められています。

3. 必要な経験と知見

自動車ビジネスでの収益向上経験

自動車メーカーやサプライヤーとの関係構築や、自動車市場のトレンド分析など、ユーザーが何を求めているかを理解し、そのユーザーに対して何を提供するためにどのように動くかの知見が含まれます。グローバルビジネスになるため、ユーザーのインサイトも幅広く抑え、コンサルティングビジネスに活かすことが可能です。

自動車業界での技術開発経験

自動車産業において技術開発は非常に重要です。コンサルタントの中には「技術開発」のリテラシーを持つ人材が少ないため、自動車部品やシステムの設計、開発、テストなどの経験を持つ人材は、自動車業界における技術的な課題解決についての知見を持っていることが強みとなります。

ビジネスプロセスの変革経験

サプライチェーン、セールスマーケティングプロセス、他業界との合従連衡など、さまざまな要素を変革していくことが求められます。変革を実現するために組織をどのように動かしていくかを考えることがコンサルタントの役割です。実際に巨大組織を変えていく上での勘所を押さえ、どう変えると何が実現できるかを整理してきた経験がこの分野で生きてきます。

4. 自動車業界の未来

日本では車離れが進んでいるものの、自動車業界は世界で成長中です。テックジャイアントも乗り込んでくるフィールドであり、日本が戦える数少ないフィールドでもあります。新たなモビリティの在り方を創っていくのは、まさしく未来を創る仕事です。これまでの知見を活かし、そんな仕事に取り組みたい方には面白いステージです。

5.まとめ

自動車業界のインダストリーコンサルタントが向き合う顧客は、日本の未来を創るプレイヤーです。向き合う課題は、存在意義の再考、ビジネスモデルのピボット、合従連衡による新たな価値創造などです。活かせる能力や経験は、自動車ビジネスでの収益向上経験、技術開発の知見、ビジネスプロセスの変革経験などです。

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